>専門家を追いかけることは間違いで、しかも大きな犠牲を伴う間違いだというのが本書の主張だ。専門家を追いかける代わりに、集団に答えを求めるべきなのだ。
通常、特に株式投資関連の本を読んでいると、集団は愚かなものとしてみなされます(バブルの発生など)。ところが、本書ではある特定の条件の下において、集団は意志決定をする際に非常にうまく機能するということを主張しています。
その条件とは
意見の多様性:それが既知の事実のかなり突拍子もない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている
独立性:他者の考えに左右されない
分散性:身近な情報に特化し、それを利用できる
集約性:個々人の判断を集計して集団として一つの判断に集約するメカニズムの存在
実際の具体例では、スペースシャトル・チャレンジャー号が発射74秒後に爆発した際の、関連企業4社の株価変動について取りあげています。爆発から21分後、4社の株価は軒並み下落しますが中でもモートン・サイコオールの株価下落幅がひときわ目立っていました。爆発当初は原因がどこにあるかまだ明らかになっていなかったにもかかわらず、市場はサイコオールが怪しいと見抜いていたようです。実際、その後の調査によってサイコオールのOリーングシールに欠陥のあったことが分かり、市場の正しさが証明されました。なぜこのように、株式市場が公式の調査に先んじて正しく反応できたか疑問に感じた研究者がインサイダー取引の有無などを詳細に探したようですが、そのような証拠はついに見つからなかったようです。
他にも行方不明になった潜水艦の捜索や、牛の体重当てなど様々な事例が紹介されています。
本書は事例や、前提条件ついて多くのページを割いているのですが、このような現象の起こるメカニズムが十分説明されていないので納得感がイマイチでした。直観的に理解しづらいところが集団の知恵を利用するアプローチになかなか結びつかないことの理由かもしれません。けど、世の中わかりやすいことが正しいとは限らないんですよね。
また、株式市場は独立性と分散性の条件が揃わない時が多いので、いつでも効率的と考えるにはやはり無理があるなあと感じます。チャレンジャー号の株価推移については爆発後21分というかなり短い時間に起こったことなので、上記の条件がほぼ揃っていたように思います。
全体を通して、この事例はわざわざ出さなくてもいいんじゃない?と若干冗長に感じることもありましたが、それぞれのケースは大変示唆に富んでおり、面白かったです。出版物としての不満を述べると、参考文献が全く載っていなかった。調べたいことがいくつかあったのに。。。
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